『スイートプールサイド』 水に流せないフェチズム
水に流せないフェチズム
あらすじ:高校1年になっても毛が生えないことに疑問を抱く太田年彦(須賀健太)は、同じ水泳部の毛深い女子、後藤綾子(刈谷友衣子)のことを、陰でうらやましいと感じていた。ある日、綾子に毛深いことを相談されその悩みを真剣に聞いていた彼は、「わたしの毛を、そってくれない?」と思いも寄らぬお願いをされ仰天する。それ以来、二人だけの秘密の関係がスタートする。
数年前に読んだ『アバンギャルド夢子』で押見修造ファンになったのだが、今でもこの作品の色鮮やかさは鮮明に心に残っている。ち○こを描きたい画家志望の女の子がそれを見るために奮闘する話しだ、シリアスとコメディの間で揺れる不安定さが1番の魅力。
『スイートプールサイド』では、体毛が薄いことに悩む少年と体毛が濃いことに悩む少女の物語だ。
このストーリーの発見でこの話しは3分の1、成功が見えている。
あとは、名作漫画から託されたバトンをゴールに持っていく映画の力が問われる。
映画の力はあったのか?
体毛が濃い女の子を演じた刈谷友衣子はヒロインとしては、可愛くなくて、当初疑問に思ったのだが、話しが進むにつれ、その無表情が変わる瞬間を演じ切っていて、魅力的に見えてくる。さらにどこと無く毛深そうに見える雰囲気が漂い見事なキャスティングとなっている。
映像的にフェチズムの表現を倍増させるために狙ったであろう。
イメージなのにあまりに現実的でその興奮、多幸感が感じられなかった。そもそもイメージシーンのせいで、気持ちが途切れてしまう。もっと役者を信用してもいいのではないかと思った。
水に流せないフェチズムの世界
原作の力を生かした秀作になっている。簡単に、水で流せないフェチズムの世界に浸ってみてはいかがしょうか。