『バクマン』 時間経過とメタ構造 + 友情、努力、勝利
『バクマン』 時間経過とメタ構造 + 友情、努力、勝利
あらすじ:『DEATH NOTE』の原作コンビ、大場つぐみと小畑健による週刊少年ジャンプでの連載を目指して漫画を描く高校生コンビの物語を『モテキ』の大根仁監督が実写映画化。優れた画力を持ちながら将来の展望もなく毎日を過ごしていた高校生の真城最高(佐藤健)は、漫画原作家を志す高木秋人(神木隆之介)から一緒に漫画家になろうと誘われる。当初は拒否していたものの声優志望のクラスメート亜豆美保への恋心をきっかけに、最高はプロの漫画家になることを決意。コンビを組んだ最高と秋人は週刊少年ジャンプ連載を目標に日々奮闘するが……。
レビュー:原作の漫画は途中までしか読んでいないが面白かった。いわゆる漫画家マンガ。
漫画家マンガとして1番に思い出すのは藤子不二雄先生の『まんが道』だと思うが、今は漫画家マンガブームと言っていいだろう。
『描かないマンガ家』『アオイホノオ』『かくかくしかじか』など人気作品が多く出ている。そんな昨今の漫画家マンガブームを牽引している作品が『バクマン』だろう。
■大根仁監督の手腕 時間経過
原作は面白かったが、映画となると少しハードルが高いのではないのかと思いながら見に行った。だが、いい意味で裏切られ、大根仁監督の手腕が光る良作となっている。
もの作り映画、あるいは、スポーツ映画は、作っていく過程(努力)の試行錯誤 が面白く無いと成立しない、その点漫画は描く行為が個人作業になることや動きが少ないことから映画として難しいのではないかと思った。
その難点を『バクマン』は上手に処理している。漫画を描くシーンは良質な音楽とちょっと工夫がある映像で上手に時間経過していた。この手法がブリッジ的に何度も入ってくるのだが、それが全てエモーショナルなシーンになっていて、飽きること無く見ることができる。サカナクションの音楽を選んだことも凄い。
映像に関してはどこかでみたことあるようなものなんだけど選ぶセンスが光っている。大根仁監督の前作『モテキ』の森山未來がダンスをするシーンはまんま『(500)日のサマー』 の引用だったのだけど(本人も語っている)今回もその様なシーンが多くみられる。選ぶセンス組み合わせるセンスが大根監督はずば抜けている。
■メタ構造 「漫画を描く」「漫画」を「映画」に
実在と虚実が入り混じっているので、知っている漫画が多数出てきて二重のメタ構造を作り上げていて、不思議な感覚に陥る。
■小松菜奈の有り余る魅力
『渇き』でその怪しい魅力に惹かれた。
今回はヒロインを演じているのだが、『渇き』では気づかなかった、演技の能力不足が露呈している。だが、それを差し引いても、有り余る魅力が彼女にはある。
■描かないことへの英断
高校生のお話で家族が1人も出てこないのは流石に違和感がある(叔父さんは出てくる)入院しているのに家族は来ないし、作業場に訳の分からないおっさんがたくさん出入りしているのに、家族は何の心配もしていない。
家族を描かないならば、描くシーンを限定しないと違和感がある。
■「友情」「努力」「勝利」
ジャンプ漫画の信念である「友情」「努力」「勝利」に、この映画自体が向かっていく構造もメタ的になっていて、面白かった。
そこに向かっていくだろうと、思わせておいて、ちゃんとそこに向かっていく気持ちよがある。