『へんげ』 わからないことへの恐怖とエンディング
わらないことへの恐怖とエンディング
あらすじ:一組の夫婦の物語。夫は体をそり返して叫び続ける謎の発作に悩まされている。
発作は頻度をまして、徐々に人間では無い異質のモノへ変化していく、変化が進むにつれ、夫は夜な夜な街を徘徊して人を襲うようになってしまう。その事実を知った妻だが、献身的に夫に尽くす。夫の変化は進み元の姿を想像できないまでになってしまう。その後も巨大化、凶暴化していく夫、だが妻は変わらず、夫を愛し続ける。
人間が異質のモノへ変化するはなしと言えばフランツ・カフカ『変身』を思い出すが『へんげ』は『変身』とは逆に、身体が大きくなる、だがタイトルからも監督が意識しているであろうことは想像に固くない。
変化後の姿は怪物または怪獣だが、これは『変身』の名前を出すまでも無く、日本の映像文化だと思う。妖怪人間ベム、ウルトラマン、仮面ライダー、古くは狐も狸も化ける。
この監督は『変身』を読んでいると思うが読まなくても作られたであろう作品だろう。
怪獣映画からの影響も強くうけていると思うのはCGよりも特撮を多く利用して撮られていたからだろうか。
この映画(物語)の特徴のひとつはオチの斬新さ。もうひとつは、謎の奇病が最後まで謎のまま終わるところだ。通常、体が変化してく、なんて、トンデモない事件が起きているのだから原因究明に時間(物語)をついやしたくなるところを、あえてそこに焦点をおかずによくわからないがあれよあれよという間に体が変化していくその様をみせられるとなんとも言えない不安感を感じる。
一応、原因究明に乗り出すシーンはあるが、その部分はすぐにおざなりにされる。大学の旧友の先生に診てもらうシーンもあるものの、なんのヒントもなく別の方向へ進む、並の作家だったら、山菜とりに出かけた際に、食べた野草が原因とか、代々呪われた家系だったとか、そこまでに行かなくても、観賞者が想像できるだけのヒントは与えたくなるものだと思う。
視聴者としては想像もできない。
妻が絶対的に夫を愛しているが、何故そこまで夫を愛しているかも最後まで言及しない。
通常考えられるドラマを廃して純粋に人間が変化することへの恐怖を画いている。奇妙奇天烈な映画だった。