『苦役列車』丁寧につくる職人技
丁寧につくる職人技
あらすじ:1986年。中学校を卒業して以来、孤独な日々を過ごしていた北町貫多(森山未來)は、19歳の今、日雇い労働で稼いだ金をあっという間に酒と風俗に費やすようなその日暮らしをしていた。ある日、職場に専門学校生の日下部正二(高良健吾)が入ってくる。一緒に過ごすうちに、貫多にとって日下部は初めて友達といえるかもしれない存在になる。そんな中、古本屋に立ち寄った貫多は店番をしていた桜井康子(前田敦子)に一目惚れをする。日下部の後押しにより貫多はどうにか康子と友達になる。しかし友達という存在に慣れていない不器用で屈折した貫多の態度により、3人の間に亀裂が生じる……。
原作の西村賢太は批判していたようだが十分楽しかった。おそらく、自分の作品をありふれた青春映画されてしまったことへの不満だろうと思う。
今作は、紛れもなく青春映画で、誰にでもありそうな平凡な話なのだ。
友達ができて、自我で友達を失い、恋をして失恋する。
使い古されてきたストーリー
小説は自伝的は部分が強い為自分史を汚された思いがしたのではないだろうか?
そんな単純な映画の勝機を製作者達は丁寧な作り込みに賭けた気がする。
徹底的な曇天狙い。
徹底して1980年を再現。
職場の工場で食べる弁当は、割り箸では無く、洗って何度もつかえるプラスチックの箸が使われている。
一方、社員食堂では割り箸だ。
プルトップが外れる缶コーヒー。
三人が海に入る。ザ青春のシーンでさえ、曇天と徹底されている。
森山未来はだらしない体作りをしているし、立ち姿は、右肩と左肩の高さが違いいかにもだ。
この役者は、見た目しか、映像に映らないことをよくわかっている。
後半から、主人公を叩きのめすストーリーが展開されるが、所詮19歳の若者、どんなに叩きのめした
ところで、客観的に見ると、いや君には未来がある、と思えてしまい。
悲惨さが伝わらいなと思いながら見ていたら
一気に3年となり、相も変わらずの生活をして、悲壮感がグッと伝わってきた。
ここらへん、脚本はすばらいしと思った。
そして、幻の高良健吾、前田敦子、が出てきて、リアルをピョンと飛び越える。
最後は、突き放してきた、主人公に光明を与えて終わる。
ありきたりの話を、徹底した舞台作りと、演出、役者によってエンターテイメントとして成立させている。
山下敦弘がメジャーで作品を撮り続けていける所以はこの辺にあると思えた。
凄く、狡猾、監督である。