映画レビュー 999

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『ザ・マスター』 天才ポール・トーマス・アンダーソン

天才ポール・トーマス・アンダーソン

 

あらすじ:第二次世界大戦末期。海軍勤務のフレディ・クエル(ホアキン・フェニックス)は、ビーチで酒に溺れ憂さ晴らしをしていた。やがて日本の敗北宣言によって太平洋戦争は終結。だが戦時中に作り出した自前のカクテルにハマり、フレディはアルコール依存から抜け出せず、酒を片手にカリフォルニアを放浪しては滞留地で問題を起こす毎日だった。ある日、彼はたまたま目についた婚礼パーティの準備をする船に密航、その船で結婚式を司る男と面会する。その男、“マスター”ことランカスター・ドッド(フィリップ・シーモア・ホフマン)は、フレディのことを咎めるどころか、密航を許し歓迎するという。フレディはこれまで出会ったことのないタイプのキャラクターに興味を持ち、下船後もマスターのそばを離れず、マスターもまた行き場のないフレディを無条件に受け入れ、彼らの絆は急速に深まっていく。マスターは“ザ・コーズ”という団体を率いて力をつけつつあった大物思想家だった。独自の哲学とメソッドによって、悩める人々の心を解放していくという治療を施していたのだ。1950年代。社会は戦後好景気に沸いていたが、その一方では心的外傷に苦しむ帰還兵や神秘的な導きが欲されていた時代であり、“ザ・コーズ”とマスターの支持者は急増していった。フレディにもカウンセリングが繰り返され、自制のきかなかった感情が少しずつコントロールできるようになっていく。マスターはフレディを後継者のように扱い、フレディもまたマスターを完全に信用していた。そんな中、マスターの活動を批判する者も現れるが、彼の右腕となったフレディは、暴力によって口を封じていく。マスターは暴力での解決を望まなかったものの、結果的にはフレディの働きによって教団は守られていた。だが酒癖が悪く暴力的なフレディの存在が“ザ・コーズ”に悪影響を与えると考えるマスターの妻ペギー(エイミー・アダムス)は、マスターにフレディの追放を示唆。フレディにも断酒を迫るが、彼はそう簡単にはアルコール依存から抜けることができなかった。やがてフレディのカウンセリングやセッションもうまくいかなくなり、彼はそのたびに感情を爆発させ、周囲との均衡が保てなくなっていく……。

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ブギーナイツマグノリアと群像劇で“人間”を描き、ロバート・アルトマンの再来と呼ばれた、天才ポール・トーマス・アンダーソンが群像劇をやめた三作目パンチドランク・ラブでは若干筆休めをした感があったが続くゼア・ウィル・ビー・ブラッドでは恐ろしいほどに“人間”そのものを炙りだすように描いて近年まれに見る名作を創りだした。血は石油よりも濃い。そして今作のザ・マスターではゼア・ウィル・ビー・ブラッドでもキーマンとなっていた宗教家を中心に据えて物語を展開している。

と外堀を説明した訳だが、正直【ザ・マスター】を消化しきれてないためにだらだらと駄文を連ねたわけだ。

もちろん、ホアキン・フェニックスの怪演 フィリップ・シーモア・ホフマンの名演、パーフェクトな撮影(写真館での正面切り返しからの代名詞の長回し、荒野でのバイク)音楽とのシンクロ、とそれだけでこの映画がとんでもない名作であることには間違いないが、PTAの映画でいつも感じる、外側からじょじょに中心に寄って行き最後には真ん中にある“もの”をふっと浮かび上がらせるそれを発見することが出来なかったことによる戸惑いがある。

“マスター”とは教祖ということだろうが、彼のカリスマとして素質はどうだろうか?

序盤からフィリップ・シーモア・ホフマンが教祖の素質(完璧なカリスマ性)がないことを見せてしまっている。暴飲するし、すぐ切れる。これはカリスマとして素質があるとは思えない。

序盤カリスマ性を見せといて 「あぁこいつ対したことなかったな」と洗脳が溶ける展開がわかりやすいが初めから洗脳に失敗している。(観客への見て方として)

そしてホアキン・フェニックスと言えば戦争によって怪物になったと言えばそうとれるが、そうではなく純粋怪物として見るべき存在だ。純粋怪物のホアキン・フェニックスはマスターのセッション(洗脳)によって人間になっただろうか?

恐らくまったく人間になっていない。最後の再開のシーンではお互いを認め合うように別れる。そしてバーの行きずりの女とセックス。ホアキン・フェニックスがマスターになった瞬間ということなのだろうか。熟考が足りないか。

 

洗脳映画【時計じかけのオレンジ】を一番最初に思い出した。特に語れるほどの突破口を見つけ出せていないが、両作とも最後はセックスで終わる映画だ。

 

 

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